クラフトビールは数多くの工程を経て私たちの手元に届きます。近年ではブルワーの弛まない努力によって様々な醸造方法が用いられている。
ここでは一般的な醸造方法を紹介します。

一般的な醸造工程図

①麦芽粉砕
麦芽(モルト)をミル機で潰して砕いていく。理想は後々にフィルターの役目をする穀皮はなるべく壊さずに砕くのがポイント

②糖化(マッシング)
砕かれた麦芽を糖化槽で湯に浸し麦芽内のデンプンを酵母が分解できる発酵性糖分と分解できない非発酵性糖分に変換する工程
発酵性糖分と非発酵性糖分は糖化に使用する湯の温度による。糖化によって得られた麦汁とスパージング(穀皮に残った糖分を洗い流す作業)によって得られた麦汁は煮沸釜に移される

③煮沸
糖化によって得た麦汁を60〜90分間煮沸させる。煮沸開始にビタリングホップを入れ苦味をつけたり、煮沸中や煮沸終了間際にアロマホップを投入しビールを特徴付ける
※ホップは投入量が多く、煮沸時間が長いほど苦味が強くでる

④ワールプール
麦汁には煮沸によって凝固したタンパク質やタンニンなどが含まれており、濁りの原因となるのでワールプールタンク内に渦巻流を発生させタンク中央底に沈め澄んだ麦汁のみを発酵タンクに移す

⑤冷却
ワールプール後の麦汁は非常に高温で発酵のための酵母を投入することができないので温度を下げる必要がある。冷却方法は複数あるが、一般的には熱交換器(プレートチラー)による冷却行われている。熱交換は高温の麦汁と冷水を交換器の中で交互に流し麦汁の熱を冷水に吸収させる方法

⑥発酵
冷却された麦汁にはエールビールにはエール酵母(上面発酵)、ラガービールにはラガー酵母(下面発酵)によって発酵が行われる。発酵には、エール酵母は20℃前後で3〜4日間、ラガー酵母は10℃前後で7〜10日間を要する。比重をチェックし目標とする数値まで下がったら、発酵タンクを冷却して酵母の活動を止める

⑦熟成
発酵終了後のビールは0〜4℃の低温で上面発酵ビールで1週間以上、下面発酵ビールで1ヶ月以上熟成させる。この熟成期間でアロマ・フレーバーの調和が進み、不快なビールな原因となる成分が適正レベルまで低減される

⑧パッケージング
出来上がったビールは目的に応じて瓶や缶、ケグなどに詰められる

■麦汁を煮沸する理由
①糖化工程で得られた麦汁には、まだ糖化酵素(アミラーゼ)が活力を維持していたり、バクテリアなどの微生物が混入しているので、煮沸によって死滅させる必要がある
②麦汁には、ビールの濁りや劣化の原因となる物質が含まれている。これらは煮沸によって凝固しワールプールで沈殿する性質があるため、効率良く沈殿するようにしっかり煮沸しておく必要がある
③麦汁は目標とする比重よりも低いため、煮沸することで比重を補正する必要がある
④ホップの苦味成分であるアルファ酸は熱を加えることでイソ化して麦汁に溶け出し苦味成分となる
⑤オフフレーバーの原因一つのDMSを蒸発させて除去する必要がある